Interview : ピースアド担当教員 マエキタミヤコ

東京外国語大学にピースアドが開講して3年間経ちました。紛争当事国からの留学生が、自身が選んだ切実なテーマを、日本のデザイナーの力を借りて形にする、ピースアド。今年も、ユーモアと客観性と、ひとりでも多くの人に見てもらいたいと思うサービス精神を糧にして、プロフェッショナルなデザイナーとキャッチボールし、広告作品を作ってきました。ピースアド展も秋と冬の2回、世界銀行1階ロビーで開催させてもらいました(世界銀行のみなさま、ありがとうございます)。さらに今年はピースアド展の期間中に2国間中継テレビ会議シンポジウムも開催しました。インドネシアのツキヨノ教授のゼミ生を相手に、完成したばかりの自分のピースアドを、留学生がひとりひとり、企画意図、キャッチコピー、ビジュアル、平和構築への思い、苦労した点について、プレゼン(お披露目)し、反応を見、感想をもらいました。みんなが一斉に笑う作品、小首をかしげる作品、質問がたくさん出る作品、次から次へとアイディアのアドバイスをしたくなる作品など、とても個性的で、多様性のある世界でした。容赦のない質問に、留学生たちもかなり鍛えられたのではないでしょうか。私がびっくりしたのは、みんなの感覚はそれほど変わらない、ということ。「思っていたより伝わっている」のです。あまりに楽しかったので、次回ツキヨノ教授ゼミと合同ピースアド制作をしようという話にもなりました。

表現の細部へのこだわりも大切ですが、「単に知らせる」ことの重要性も再確認できました。クリエイティブブリーフ、コンセプトとキャッチコピー、ボディコピーを書き、ビジュアルアイディアを考え、体験に基づく表現を作って行きます。

今年の前期は、永井一史さんを始めとする博報堂のデザイナーが10名、電通のデザイナーが5名、フリーランスでは浅葉勝己さん、水谷孝次さん、Jonathan Barnbrookさん、富岡史棋さん、野村真美さんなど、大御所のみなさんが関わってくださって、特に華やかなピースアドになりました。

表現が効きすぎ強すぎたため、展示できなかった作品もありました。ネオナチ問題を告発したピースアドには伊勢崎賢治教授から「プロパガンダとの境界線が際どい」と辛口アドバイスをもらいました。特定の人たちへの弾圧へ繋がりそうな表現については、重々気をつけること。

今年はまた環境問題や生物多様性の表現を、平和構築に引き寄せて、作品にしていく人がぐっと増えた年でした。

来年はさらにキャッチコピーを導きだすまでにしっかり時間と手間をかけていこうと思っています。また今年もみんなの記憶に鮮やかに残るピースアドを、みんなと力を合わせ、作って行きたいと思います。

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